【「調べる学習」のスタートは、自然からの贈り物】

ぼくの家の周りには、いろいろな鳥が暮らしている。2年前の夏、ぼくはなんと42.5cmもある、信じられないくらい大きい羽根を「発見!」した。羽根の持ち主はだれだろう?まだ名前のわからない鳥からのおくり物から始まる、鳥の巣、子育ての研究をしたいと思った。

【一冊の本が、落とし主の決め手になった!】

鳥図鑑で、拾った羽根は、翼の両はじにある最も大きな羽根で、初列風切羽(しょれつかぜきりばね)ということがわかった。ぼくが羽根の落とし主にたどりつく方法として、○茶色の鳥○全長50cm以上○夏に岩手県にいる鳥、と選んでいくと、500種類の中から16種類にしぼられた。決定的な本を探していると、図書館の方に「羽」の図鑑を紹介していただいた。
1.40cm以上の初列風切羽をもつ鳥は16種類のうち、トビ、クマタカ、イヌワシの3種
2.羽根の同じ模様はトビ 
3.トビの風切羽で40cmを超えるのは6・7・8番の羽、
しんちょうに調べた結果、落とし主はトビだった!!

【飛んでいるトビを追って巣を発見、子育て観察の開始】

5月、トビがいつもの東の山で輪をかいている。見上げながら進むと、高い木の上の方に何かごちゃっとした黒っぽい 大きなかたまりが見えた。「すごい、これがトビの巣か」

北上川の川岸の方で、こんもりとした枝の中に、トビに負けないくらいの大きさの黒っぽいかたまりが見えた。「巣だ。ノスリも大きな巣があった。」とび上がるほどのうれしさだった。

【トビ・ノスリの子育てを観察して興味を増した羽のちから】

7月、それまで巣へまっすぐ運んでいた親ノスリが巣の手前の地面へ下り、えものを置くのを見た。なぜ?するとすぐに近くの枝にいたひな鳥がまいおり、えさをつっついた。9月、ノスリが2羽、僕の家の前のたんぼにいる。だんだん距離を伸ばして、ついに巣から1㎞も遠くまで飛んできた。自由に飛び回り、地面におりてえさをとることも出来た。ひとり立ちも近い。ノスリの母さん作戦勝ち!がんばり勝ち!
8月。トビの子どもが山から人の家の方までやってきた。少しバサバサッと飛んでみるがすぐにおりてくる。9月、土手にザーッと下りた若トビはかがみ、くちばしで何かをつついている。ついに自分でえさをとったのだ。この日は翼を動かさない飛び方の練習をしている。親鳥は うながすように輪をかいて上昇していく、若鳥たちも少し上昇したが、親のようには上がらなかった。練習また練習だ。

【鳥はどうして飛べるの?】

大きな疑問は「鳥はどうして飛べるのだろう?」「翼の特別な形が浮く力を起こす。それは翼がかまぼこ形になっている」ことだ。「翼の上と下では空気の速さが違い、翼は上に持ち上げられる。」ぼくも、巾(翼開長)90cm、胴体(全長)50cmのトビにそっくりの大きなグライダーを発泡スチロールで作って飛ばした。鳥の滑空(かっくう)を実現してみた。ぼくの鳥がふわりっと浮かびながら飛んだとき、ぼくも大空をすいーっと飛ぶ鳥になった。

【翼を上下に動かしてどうして前に飛ぶの?】

ノスリが羽ばたいて飛ぶ様子でとても不思議なことがある。それは、翼を上下に動かしているのに前へ進むということだ。調べると「翼を上げるとき…風切羽が縦向きになってすき間ができて空気をにがす」「翼を下げるとき…風切羽が横向きになってすき間を閉じ後ろ向きの風をおこす」「初列風切羽はじくが前側に寄ったつくりになっているので、風(空気)を後ろ側が多く受けて上げ下げするとき回転する」それを実験で確かめた。トビ・ノスリは、体重1㎏の体を浮かしている。その翼の力を想像し、トビ上がるほど驚いてしまった。トビ・・だけに

【長さ42.5cmの大きな羽根を拾ったわけがわかった!】

ある日のこと、尾羽(おばね)がしっぽのようにながーく見えるトビが来た。風が強く吹いたとき、それは、ひらひらと飛び去ってしまった。大事な羽がぬけ落ちた、と思った。調べると、鳥の羽は「換羽(かんう)」といい、「全部の羽が定期的に順番に生えかわる。基本的には年一回、タカ類では数年に一度すべての羽がかわる」のだ。ぼくの拾った羽根は生えかわる順番がやってきてぬけおちたんだ。ぼくは何百回も働いた風切羽をなでていたわってやった。巨大な羽根がなぜ手に入ったかがわかり疑問は一通り解決したことになる。

【研究のあらまし】

研究の期間

  1. 羽根集め  小学校1年生から
  2. 本調べ   小学校4年生から
  3. 飛び方調べ 小学校5年生(平成27年)

表紙の絵・説明の絵 森田開

写真:
全ておじいちゃん(祖父)
さつえい場所…紫波町彦部
さつえいした年…ことわらない限り平成27年

参考文献 すべて紫波町図書館

いつも親切に教えていただいた図書館の方々ありがとう。ぼくの気持ちをわかっていたのか鳥を見つけるたびに写真さつえいを付き合ってくれたおじいちゃんにもありがとう。