私は今、13歳だ。あと4年で選挙権を持つようになる。改正された選挙法が社会にプラスかマイナスかもよくわからないまま18歳になって、何となく投票するのは無責任で嫌だ。だから私は、この選挙法がいいことなのか、よくないことなのか、調べて、ハッキリさせたいと思っている。

公職選挙法改正の裏側と社会のとらえ方

新聞の記事を読むと疑問が沸いてきた。

  1. 1なぜ18歳なのか
  2. 2なぜ改正したのか
  3. 3改正したことによって、どんな効果があるのか
  4. 4民法の成人年齢や、少年法の適用年齢を、なぜ一緒に引き下げなかったのか

「18歳」をキーワードに、これらの疑問について、そしてこのニュースを社会はどう受けとめたのか、調べていこうと思う。

「18歳」という年齢は本当に適切か。

図書館で調べて分かった

18歳選挙権はほぼ世界の流れである。選挙権の引き下げは世界の各国でおこなわれてきたことで、それが世界の主流となっている。

諸外国においては選挙権年齢と成人年齢が一致している。

なぜ選挙権年齢とともに成人年齢などの引き下げを行わなかったのだろうか?「18歳」という年齢が大人なのか子供なのかをはっきりさせないまま決まった制度改革といえる。

18歳になると、運転免許証や国家資格が取れるなど、さまざまなことができるようになる。ずいぶんと大人に扱われているといえる。一方で、刑事手続きや民法では成人は20歳とされており、18歳はまだ守られているといってもいい。

18歳で大人と扱われるのなら、相応の判断をすることが求められる。しかし、18歳でそれができるだろうか。そのためには、どのようなことを学んでいかなくてはならないのか。

選挙権年齢引き下げの背景

選挙権年齢の変化を教科書や図書館の本を参考にしてまとめた。

日本で初めて選挙が行われたのは1890年。投票できたのは「満25歳以上の男性」で「国税15円以上を納める者」だけで、国民の1.1%にすぎなかった。

1910年代に入り、「満25歳以上の男性」であれば納税額に関係なく選挙権が与えられることになった。

1945年、衆議院議員選挙法が改正され「満20歳以上」に引き下げられ、女性の参政権も認められた。この改正によって有権者は国民の約50%になった。

2015年の公職選挙法改正のきっかけは2007年の日本国憲法の改正手続に関する法律(以下国民投票法)成立にある。
この法律の中に「日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。」と定められている。

なぜ18歳なのか?その理由は2007年国民投票の審議の中に表れている。『国民投票法の国会審議録(抄)』に当時国会で投票年齢を18歳にしようとした人たちの主張が書かれている。

選挙権年齢を18歳とした理由は

  1. 世界では選挙権年齢は「18歳」が主流だから、日本もそうすべき。
  2. 少子高齢化の影響で、高齢者の割合が多くなっているから、若者の投票数を増やしたい。
  3. 若い人達は自分の考えを持っており、政治や社会にも関心があるので、十分に判断できると思った。

「18歳」にすることに何も問題は無いのか。
その答えは『憲法改正国民投票の投票権年齢18歳以上と選挙権年齢等』に書かれていた。

反対の意見は

  • 若者は国政に関する判断能力が十分ではない。
  • 世論調査によると、引き下げに賛成しているのは4割にも及ばない。
  • 当事者の意見が明らかになっていない。
  • 世界に合わせる理由が明らかになっていない

選挙権年齢を18歳とした理由③には疑問を感じる。私は新聞の投書欄を毎日読んでいるが、政治に対して意見を述べている10代の投書はあまり見かけない。
また①に疑問を感じるのは私だけだろうか。世界の流れに無理に合わせようとしなくてもいいのではないかと思う。

国民投票法が改正された理由を調べてみると、個人的には疑問を感じるものだった。しかし、私達は「若い人達でも十分に判断できる」と期待されているともいえる。私達はもっと政治や社会について関心をもち、学んでいくべきだろう。

なぜ成人年齢は引き下げられなかったのか

選挙権年齢だけを引き下げ、民法は引き下げないというのは矛盾しているのではないか。
この疑問を解決するために『国民投票法の国会審議録(抄)』で成人年齢を18歳に引き下げることについての意見を調べた。

意見の根拠を立場ごとにまとめた。
●成人年齢を18歳に引き下げる必要がある
…国際的な標準や常識に基づいて考えると、社会的には引き下げる必要がある
●引き下げる必要はない
…法律にはそれぞれ立法的目的があるので、関係する全ての法律の年齢を引き下げる必要はない
●引き下げるか検討すべき
…権利をもつということには義務が伴うので、法律改正は慎重に行うべきだ
●附則を入れてはどうか
…成人年齢や民法との関係を議論する必要があるが、その時間は短くすべきだから、附則をいれてはどうか

「成人年齢引き下げについての議論を読んでいると、「具体的な例」がでていないように感じる。明確な理由がない。国会審議に関わった人たちは「大人」をどのようにとらえているのだろうか。

私が考える「大人」とは、親から自立している人。何か間違いをした時でも、自分で責任をとることができる人。1人1人考えは違うけれど、「大人の基準」を具体的に説明して議論を深めていってほしい。

「選挙権年齢引き下げ」に対する新聞各社のとらえ方

新聞各社は「18歳選挙権」をどのように考えているのだろうか。社説を比較し、考えの違いを調べた。

朝日:政治や選挙制度の改善。課題を挙げつつも改正を「歓迎する」としている。

読売:若者の政治参加を後押しする取り組みの重要性。「民主主義の質を高める」と賛成している。

東京:「主権者教育」が成功の鍵を握る。「若者の意見がより政治に反映されるのは望ましい」とし、賛成している。

産経:若い人達が国を考える契機になってほしい。「対象の幅を広げる意識は大きい」と賛成している。

新聞ごとに一番主張している点は違うが、改正に賛成している点と、政治や選挙についての教育が大事になってくるという点は共通している。

新聞社によって社説の内容がここまで違うとは思いもしなかった。大切なのは「考えは1つではない」と知ることではないか。物事をいろいろな角度から見て、自分で判断するためには様々な「情報」が必要だ。情報=新聞も1社だけでなく他の社の考えも知った上で、物事を判断していくべきだと思う。

受け身から自発へ ~主権者教育のあり方~

第1章で調べた中で明らかになってきたのは教育の大切さだ。新聞各紙も「主権者教育」が重要になると主張している。どのような教育が必要になるのか?私達は何を学び、身につければ良いのか?それを考えていこう。

主権者教育とは?

「主権者教育」とは、国や社会が抱える問題を、自分たちにも関係する問題だと考え、行動するための素養を身につけさせ、政治参加の意識を高めていくことである。

政治に関する関心は誰でもすぐに持てるものではない。だからこそ、小学校のうちから政治に触れる機会を作り、少しでも興味を持てるようにしていくことが大事なのではないか。

日本よりも先に18歳に選挙権を与えている外国は、どのような取り組みをしているのだろうか。

本で調べると、社会科とは別に「シティズンシップ」という教科があった。(イギリス、フランス、オーストラリア、シンガポール、台湾)

シティズンシップ教育:民主主義を構成する市民を育てていく教育。日本の道徳教育やボランティア活動もこの一環。

「シティズンシップ教育」と「主権者教育」は、目的が似ていると思う。同じものなのだろうか?

「主権者教育」は「シティズンシップ教育」の一部であることがわかった。

今の日本には、この「シティズンシップ教育」が必要になってくる。若い人達は選挙に関する知識が足りない。「自分から行動しよう」という姿勢も多く見られない。そして関心がない。日本も小さい頃から政治に触れる機会を作るべきだ。

中学・高校の先生方の思い

「主権者教育」が学校教育に取り入れられるとなると、社会科で教える内容は変わってくるはず。中学校・高校の社会科の先生方は「選挙権年齢引き下げ」と「これからの社会科の教育」についてどのような考えをもっているのだろうか。

中学校で社会を担当してくださっている先生にインタビューをした。

選挙権年齢が18歳に引き下げられたことについてどう思われますか?

いいことだと思いますよ。若者が国政や地方政治に関心を持つでしょうし、関心があって選挙に行くようになれば、投票率が上がると思います。

生徒は、政治や選挙について、どのような姿勢で学んでいってほしいと思われますか?

まず「選挙権とは」という知識を理解してほしいね。中学生は生徒会が将来につながっていくので、身近な生徒会も大事にして、取り組みもしっかりやってほしい。

カリキュラムは今のままで良いと思われますか?

政治は変わっていくから、それに合わせて変えていく必要がある。政治を身近に感じるために、生の国会中継を見たり、タイムリーな話題を新聞や袖ケ浦市の広報紙を使って考えたりする取り組みをやろうと思っているよ。

先生方は私達のためにいろいろなことを考えながら授業をしてくださっている。来年の授業で新しい取り組みをするのが楽しみになった。

次に、姉が通っている県立高校の社会科の先生2名にアンケートを依頼した。

選挙権年齢引き下げについては、「国際的な流れの中での引き下げについては肯定的にとらえている」とする先生がいる一方で、「18歳は社会の経験がなく、周りの意見に流されやすい」という理由で「18歳に選挙権を与えるのは不安」という回答もあった。

これまで賛成という意見が多かったので少し驚いたが、理由はとても納得のいくものだった。

生徒に関心を持たせるために、どちらの先生も「基礎知識」が重要だとしていた。幅広い知識や他人の意見を聞くことも大事だといっている。

これは、生徒が「学ぼうとする姿勢」にもつながってくるものだろう。

政治について教えるときには、「中立」ということに気をつかわれていた。

社説を読み比べた時、教員の政治的中立性を心配するものがあったが、そう心配する必要はおそらくないと思われる。

インタビューやアンケートを通して、先生方の思いを知ることができた。先生方の思いを「受け取る側」の私達がもっとしっかり学ばなければ、とも思った。

コラム:そうだ、投票に行こう。

私の中学校では、本物の選挙に近い形で生徒会選挙を行っている。私は去年、選挙管理委員だったのだが、結構楽しかった。
生徒会選挙では、公約が書かれた紙が冊子として1人1人に配られる。立会演説会でも所信表明演説が行われる。衆議院・参議院選挙では、政党ごとの公約を知る機会は多くはない。自分から知るようにしていかなくてはならないと思う。
このように生徒会選挙をみてみると、これも主権者教育の一環なのだと思い、選挙が少し身近に感じられた。

選挙権年齢引き下げから見えてきたもの

調べていくと見えてきたのは「学ぶ側」の私たちがいかに重要かということ。選挙で適切な判断を下すためには、「多様な考え方を身につけ、受け入れること」が必要である。

政治への関心を持ち続けるために、私ができることは…

  • 社会科の授業をしっかり受け、内容を理解すること。公民だけでなく歴史も大切。
  • 新聞を読む時に、政治について書かれた記事に目を通すようにする。
  • 一つのニュースに対する、いろいろな人の意見が聞きたい。家族やクラスの意見を聞いてみる。

「公職選挙法改正は、いいことなのか?良くないことなのか?」の疑問に対して、明確な答えは出なかった。一つだけ言えるのは「いいことにするかしないかは、私達にかかっている」ということだ。
これから日本の政治に関わり、未来をつくる者の1人として、政治への関心を失わずにいようと思う。先人が私達に残してくれたすばらしい権利。この権利を十分に行使し、日本の将来を明るくしてくれる人に投票したい。決して、一票を無駄にしてはならない、ということを忘れずに。