小さい頃はみんな仲良しだったのに、小学校高学年になる頃からグループが生まれ、悪口が耳に入るようになった。何でみんな悪口言うんだろう?

疑問は解決しないまま、中学へ進学。人数増え、交流も多くなっていく。

同じ小学校だった男子に話しかけたら無視されたり、乱暴な態度をとられた。どうしてだろう。

2年へ進級すると、男女ともグループで固まって行動しているのがふつうに。悪口がそれぞれのグループを固めているように見えてきた。

何で皆あんなこと言ったり、ああいう行動をとるんだろうな…

母に、その日学校であったこと、
疑問に思ったことなどを話すと…

母「思春期だからねぇ、
いろいろあるんだろうね。」

思春期だから……?

世の中の中学生は皆、こうなのだろうか?
母の言うように、思春期という時期に入り、心理的に変わっていっているのではないか?
調べてみよう。

今の中学生のグループの実態は?

私の目から見たグループの様子
  • 中学入学後、同性同士のグループになり、男女混合のグループは見られなくなった。
  • 同じグループの人はトイレに行くのも、移動教室も一緒というように常に同じ行動をとっている。
  • グループにいる時は大きな声を出したり自信ありげなのに、一人になると急に声も小さくなったり態度がおとなしくなる。

在学の中学校の生徒160人の協力を得てアンケートを実施してみた

質問「学校でいつも一緒に行動したり話したりする仲間(グループ)がいますか?」

予想:「いる」が60%~80%

結果

80%以上がグループ化していた。学年が上がるほど進み、2年生女子は100%

入学後1年間かけてお互いのことがわかってきたり、慣れてきたことの影響ではないかと思います。

質問「そのグループは何人ですか?」

予想:4人グループが多いのでは

結果

4人~6人グループが最も多かったので、予想通り。13人以上という大人数のグループが男子だけに存在。

4人~6人は、学校のグループ活動で2つに分かれる場合でも1人になりにくい人数。ケンカが起こった場合にも、3人だと2対1になってしまいますが、4人~6人だと都合のいい人数だと思います。

2年生男子に大人数のグループが増えるのは、チームで行う部活動のつながりが強くなるせい?女子には見られなかったことに、男女の違いを感じます。

質問「グループの中で“本音”で話せる人はいますか?」

結果

「いる」と答えたのは、
男子84%、女子87%

質問「悩みをグループ内の人に話しますか?」

結果

「話す」のは、
男子67%、女子76%

悩みを話すのは45%~50%程度を予想していましたが、予想よりはるかに高い回答に驚き。グループの結びつきは私の予想より強いようです。

質問「グチをグループ内の人に話しますか?」

予想:本音で話せるなら愚痴は
ほぼ100%言えているのでは?

結果

「話す」のは、
男子74%、女子76%

本音で話せるのに、悩みは言わないし、愚痴さえ言わない人が、男子で26%、女子でも24%、つまり1/4もいることが驚き。本当に本音が言えているのかどうか、疑問を感じる。

アンケートその2(対象:2年生70名)を実施。
質問「グループに所属している理由は?」

結果

所属している理由の1位は「楽しいから」。2位は「わからない」。
「ありのままの自分でいられる」と答えた人は、70人中9人だけ。

「わからない」が2位だったのは意外。「1人でいないようにするため」や「なんとなく」のように、あいまいな感じでグループに入る人がかなりいることを表しているのだと思います。

グループに所属していて困る点も聞いてみた結果…
楽しく過ごしたい!だから相手の楽しくない愚痴や過剰な依存や、しつこい接触などを自分が受け入れるのは嫌!という気持ちを持った人が多いということだと感じました。

さらに、率直な意見を得るため、卒業式直後の先輩・男女7名にインタビュー。

  • グループに所属していたか?
  • グループができたきっかけや動機は?
  • どんな場面に一緒にいた?
  • グループに所属していて良い面・悪い面を教えて。

3名の先生(校長先生・教諭で特別支援コーディネーターの先生・爽やか相談員の先生)にもインタビューを行った。

  • 生徒は一人になることを嫌がっていると思われますか?
  • グループから外された生徒を見た経験はありますか?
  • 外された生徒はその後どう行動していましたか?

さらに、厚生労働省の資料も使って、グループの様子を調べた。

私が見る中学生の友だち付き合いの実態

「一人ぼっちはみじめ」だから、楽しさが感じられる浅いつながりのグループに所属し、信用することは不安なので、重い話題は避け、仲間外れにならないように用心深く行動している。

他人の目を気にしすぎていないかなぁ。

思春期のグループについて

思春期っていつのこと?

心理学辞典によると

【生物学的区分】
狭義:12~14歳、広義:12~17歳
【社会学的区分】
中学生以降大学生ぐらいまで

狭義の思春期は まさに中学1年から3年生!

調べてわかった

小学生高学年頃のグループはGang-group (ギャンググループ)と言い、同じ行動をすることが特徴的。
思春期前半の中学生はChum-group(チャムグループ)と言い、グループ内でしか伝わらない言葉の共有が特徴的。

課題解明と新たな課題

なぜ、どこへ行くのも一緒じゃないとダメなの?

Gang-groupが「同じ行動をすることでの一体感を重要視する時期である」ということと、関係がある。

グループにいるときは強気で大きな態度、
でも一人になるとおとなしくなるのはなぜ?

Gang-groupが「グループでの集団承認が大人よりも重要になり」、一人ではとらない行動をグループではとる場合があることがわかる。

グループにいるときだけ、他のグループの人の悪口に同調するのに、一人になると「別に…」となるのはなぜ?

Gang-group の「同じ行動をすることでの一体感を重要視する時期である」ということ、Chum-groupの「言葉でお互いの共通点を確かめ合うようになる」「誰かを仲間外れにすることで、残りの集団のまとまりを高める」ことなどと関係しているのでは。

自分の意見を言えるだけの自信がないうえに、今いるグループから外れると他のグループには入りづらいことから、今のグループに留まるために本心ではないことにも同調してしまうんだろうと考えました。

つまり
「思春期だからそんなこともあるよ。」
母の言葉は正しかった!

疑問は一応解けたけれど… 新たな疑問が!

中学生にとって望ましい友だち関係はどうあるべきか?

友だちには、悩みを話せる。何でも話せる。という意見がありました。本当かなぁ?

先生へのインタビューや資料を調べてわかった

海外と比較すると、日本の中学生は友だちを相談相手にする傾向が高い。学校でいちばん楽しいことも「友だちと過ごす時間」。でも、友だちに楽しさは求めても、友だち関係の満足度や安心感はやや低い数字が。

やはり 友だちづきあいのキーワードは“楽しさ”のようだ。

自己肯定感

中学生は自分のことをどう思っているのだろう?

内閣府が発行した「子ども・若者白書 平成26年版」で調べてみた。

「自分には長所があると信じている」は79%で、7か国中6番目。

「自分自身に満足している」は62%で、7か国中最低の結果。29歳まででは45.8%。ほかの6カ国の平均は79.8%です。

う~ん!日本の中学生は
自己肯定感が低いなあ

友だち関係の影の部分 いじめと自殺を考察

資料や新聞などで、いじめ認知件数や、学生・生徒等の自殺をめぐる状況、「世間を騒がせた中学生の事件」などを調べてみた。

年齢を重ねるほど自殺率が高くなっている。悩みを抱えたまま大きくなったから?
自殺者の男子の割合が圧倒的に多い。自殺の理由に関係しているのだろうか?

自殺の理由を調べると…
男子は、親との関係や進路の悩みが理由の上位を占め、相談できずに自殺に追い込まれ、女子は親に相談したり頼ったりしやすいから自殺が少ないのではと私は考えた。

いじめの事件報道からみえてきた!

【男子】体への直接的な暴力が振るわれている。きっかけが「嘘をついた」など、私からみたらささいな言いがかりのようなことで、Gang-group やChum-groupのような幼さを感じる。

【女子】体への直接的な攻撃ではなく、精神を攻撃する傾向がみられる。ネット社会でSNSの影響が大きくなっている。

いかに表面的な浅い付き合いになっていても、中学生にとっての“友だち”の存在は学校生活にきわめて大きな影響を与えていると分かりました。

問題解決に向けて(総合考察)

今の中学生はあまりに自分に自信を持てていないということが強く印象に残った。思春期に感じる不安からの自信のなさから、いじめに同調してしまうことも。

いじめに陥る状況をつくらないためにも、望ましい友人関係・プラスの関係を作るには一人一人がどうすればよいのだろうか?

自分とは違う考え方を肯定は出来なくても受けとめること。
(そういう考え方もあるんだと思えること。)

自分に自信を持つこと。
(今の自分を肯定的に見ることが出来ること。)

だと私は考えます。

その姿勢を身につけるために重要なことは?

幼い時の喧嘩と仲直りの経験だと私は思います。

そして、小学校のころから
正しい議論が出来る力を育てることも大切だと思います。

自分の気持ちや意見を、自然に言える。否定されても[それもあるかもな]と力まずに受け止める。

そんな自然体の自分になれば、自分に自信を持つことが出来、自分の長所を生かして自分らしく活躍出来る!

そうした生き方ができれば
「望ましい友だち関係」も自然と作られていく!
と私は考えます。

“友だち”が 共に(自)立した者同士の“共立ち”であればいいなあ!

調べる学習をしてみて、集めた資料から必要な情報を取捨選択する難しさや、アンケート集計の難しさ、グラフの形式を選ぶ難しさなど、初めて経験した難しさがいくつもありましたが、中学3年生というこの時期に“人間関係”を知ることは大切なことなんだなと感じることが出来、やってよかったと思っています。この調べる学習をしていなければ、疑問はずっと胸に残っていたでしょうし、今自分のいる成長の段階を確認できたことはよかったなと思います。今の自分をしっかりと受け止めていける自信にもつながりました。