小学生の時、初めて学校で育てた朝顔はうすいピンクと藤色の花が咲いた。友達の花は赤くきれいで、どうしても赤い花が咲かせたいと思い、朝顔に興味を持つようになった。朝顔について調べる中で、いろいろな花の形の「変化朝顔」について知った。
興味を持ったけれどそのままになっていた変化朝顔について、調べてみようと思った。

変化朝顔を知っていますか?

知っている人は知っている変化朝顔。私のまわりではどれくらい知られているか、40人にアンケートをしてみることにした。

アンケートの内容:

  1. ランダムに並べた植物の写真に変化朝顔の写真を混ぜ、それが朝顔だとわかるか。
  2. 変化朝顔を知っているか。
  3. どうして変化したと思うか。
  4. 朝顔と聞いて何色を思い浮かべるか。

変化朝顔を知っていると答えた人は、40人中12人。思った以上に少なかった。知っている人でも、あまりにも変わっている形だと朝顔だと気づかない事もあった。

変化しすぎると朝顔だと思われなくなってしまうんだなと思った。
変化朝顔は、葉が丸まったり、花びらが切れたりすることもあるので、病気や天候の影響だと思われてしまうこともある。それを朝顔の個性だと気付いて残してきた江戸の人はすごい。

変化の理由については、「わからない」と答えた人が一番多く、④の質問では「青」という意見が多かった。

青は原種の色で、日本に一番最初にきた朝顔も青色だったというから、青色のイメージが浸透していることはなるほどと思った。

アンケートをしてみて、変化朝顔が江戸時代から伝えられて残されていることが、すごいと改めて思った。そして、もっと深く調べてみたいと思った。

変化朝顔を育てる

4月のはじめ、変化朝顔の種が国立遺伝研究所で頒布販売されていることを知った。8種類の種を3粒ずつ販売してもらい、育てることに挑戦した。

7月、花が咲きました!
8つ目はまだつぼみですが、花が咲くのがとても楽しみです。

変化朝顔といっても育て方はふつうの朝顔と同じだから、特別難しくはないけれど、3粒ずつしかない種から無事に花を咲かせられるか不安だったが、それぞれが花を咲かせ、たくさんの種をつくった。

この種を、きちんと種類をまぜることなく残す、次の世代も咲かせる事は、単純な作業のようで、思っていた以上に大変そうだ。

特別なものだと思っていた変化朝顔を咲かせる事は、自分にもできる事だと分かった。でも、その種を守って残していくことは、手間のかかる事だと分かった。変化朝顔を知った時から「花」ばかりに注目していたけれど、変化は葉やつるにも表れることも知った。

変化朝顔はなぜ変化するのか

生物は細胞分裂をくり返すことで成長する。学校の理科では細胞分裂を勉強していないので、図書館の本や姉の教科書を借りて調べた。

「変化朝顔」のことを調べていくと、そのしくみは遺伝子にカギがあることが分かってきた。遺伝のしくみのほかに、トランスポゾンという遺伝子が変化朝顔に深く関わっていることも分かった。

トランスポゾンが何なのかが、本を読んだだけでは理解できなかった。
インターネットで検索していると、日本植物生理学会の「みんなのひろば植物Q&A」というコーナーに質問をよせられることを知り、さっそく質問してみました!!

『トランスポゾンがどういうものなのか、私が調べた本の説明はどれもむずかしくてよくわかりません。トランスポゾンは花の色にだけ作用するのですか?私が育てている「マルバアサガオ紅条斑点絞り」の花の絞り模様が花ごとに違うのはトランスポゾンの仕業ですか?』

2日後に返事があった。トランスポゾンがどんな遺伝子なのか、中学生にもわかるようにていねいに答えてくださった。

私の疑問の答え

●マルバアサガオ紅条斑点絞りの絞り模様が花ごとにちがうのはトランスポゾンの仕業か?
→ Yes!!
●トランスポゾンは花の色だけに作用するのか?
→ No!! 花の色の変化はトランスポゾンの作用がわかりやすい一例であって、花の色だけに作用するものではない。

もっと知りたいを追求すると…

「図書館の本で調べる」→「インターネットで調べる」をくり返していると、もっと専門的な本で調べたくなった。

国立歴史民俗博物館くらしの植物苑で、毎年「伝統の朝顔」という企画展をやっていることを知った。電話で問い合わせると、刊待物を発送してもらえることや、県立図書館に寄贈していることを教えてもらった。

県立図書館の蔵書検索で調べてみると、読んでみたい本が3冊あった。すぐに読んでみたいと思ったし、図書館の蔵書にはないものもあったので4冊の本を注文。朝顔の歴史や育て方、変化のしくみについても詳しく知ることができた。

知りたい事を伝えると、知りたい内容がのっていそうな本をていねいに教えてくださった博物館の方、ありがとうございました。

調べる学習を進めていくなかで、よく目にする名前があることに気がついた。九州大学で変化朝顔を研究している仁田坂先生だ。手紙と自分が調べてきたこと・知りたいことをレポートにして送ったところ、なんとメールで返事が来た!
仁田坂先生、ありがとうございました‼

変化朝顔の世界 ~私が調べたこと~

変化朝顔の名前のつけ方
①葉の色 ②葉の性質 ③葉の形・くせ ④つるの性質 ⑤花の色 ⑥花模様 ⑦花弁の形 ⑧花の形

①~⑧の順で、葉から花まで、そのアサガオがもつ変異が表現されている。
私が育てた朝顔は「黄/斑入/桔梗渦葉/紫/爪覆輪/桔梗咲」や「黄/抱柳葉/紅/撫子/采咲/牡丹」など。

朝顔の花色

基本の色は青、紫、紅紫、紅の4色。
4つの色が、うすくなったり、こくなったり、にごったりすることで様々な花色がうまれる。

花の色と遺伝子

アサガオには200以上の突然変異をおこした遺伝子が報告されているが、10の遺伝子が花色のもとになっている。

花の形と遺伝子

アサガオの花の形に関係する様々な遺伝子が発見されている。
基本的な形作りには3種類の遺伝子(A, B, C)が関係し、それらの組み合わせで、がく、花弁、おしべ、めしべができる。一部の遺伝子がうまく働かないことで、牡丹咲や八重咲、無弁咲などの花が生じる。

ひと言で変化朝顔といっても、様々な遺伝子の組み合わせによって、数限りない形質が現れる。そこにトランスポゾンなんていう変化球の遺伝子も登場するから、それを解明していくのは気が遠くなるような大仕事だ。

数限りない組み合わせがある中で、雑種になってしまったりすることなく、江戸時代から伝えられてきた事が本当にすごいと思う。

葉っぱの世界

変化朝顔は花の色や形だけでなく、その葉っぱにも個性があらわれる。色も形も大きさもちがう。葉っぱの個性は様々で、私は花よりも葉っぱの模様や形にわくわくするようになってきた。

これが一般的な「青並葉」。
葉の形の種類は数え切れないくらいたくさんある。

私はこういう斑入りの双葉がとても好きだ。

「変化朝顔を育ててみたい」
はじめは、花が咲けばいいと思った程度の興味だったけれど、育ててみると花が咲く前にもたくさんのドラマがあった。たった1粒の種から、何粒もの新しい種が取れるように変化朝顔の世界は無限に広がっていた。
「自分ひとりの力でわからない事は、詳しく知っている人に聞いてみる」
電話で問い合わせたり、メールや手紙を出したりするのは少し勇気が必要だったけど、よくわかるようになった。品種改良や育種という職業にも興味を持つようになった。
調べることで世界はどんどん広がっていく。「調べるって、おもしろい!!」と改めて思った。