日本がIWCを脱退し、商業捕鯨を再開することを新聞で知りました。ぼくが知っているのは、クジラは絶滅危惧種で、クジラを保護するために各国が協力して漁をしないようにしているということ。多くの国が捕鯨に反対しているのに、なぜ今、日本の商業捕鯨の再開は決定されたのだろう?反対されている理由は何なのか?商業捕鯨は本当に悪いことなのか?新たな疑問がどんどん生まれ、調べてみることにしました。

商業捕鯨の再開

商業捕鯨の再開について、さらに詳しく書かれた新聞記事を発見。わかったことをまとめてみます。

調べてわかった!

調査によって、数が回復していることが確認できた種類のクジラについて商業捕鯨を再開したいとIWC(国際捕鯨委員会)に求めたが、反捕鯨国の強い反発から、再開の見込みがなかったためIWCを脱退。
反捕鯨国が商業捕鯨を反対する理由は「動物の福祉・権利」によるもの。クジラは神格化され、感情論になりがちだという。

ぼくの考えていた「クジラは絶滅危惧種」とは少し違った。
ミンククジラは南半球だけで52万頭もいることを知り、驚いた。クジラの資源回復など調査捕鯨による科学的データで証明しても、強い反発で再開できなかったから脱退したようだ。

捕鯨は是か非か?捕鯨とクジラに関するアンケート

捕鯨について、みんなどれくらい知っているのだろう?
クジラ漁について、どのように思っているのだろう?
周りのみんなにアンケートをとってみました。

調べてわかった!

クラスメイト36名、保護者19名、昭和中学校の先生29名にアンケートを実施。
約9割の人が「クジラは増えていない」と考えていることがわかった。また、食べるために漁をすることに、中学生8割、大人4割が反対。反対意見で多かったのは、中学生は「可哀想」が1位。大人は「食べる必要がない」が1位。年齢が高くなるほど、クジラを食べたことがあり、食べるための漁に賛成する意見が多かった。

ぼくと同じように、多くの人がクジラは減っていると思っている。クジラ漁に反対の意見も多くあるのに、日本はなぜ今、IWCを脱退したのだろう?

IWC脱退、商業捕鯨再開への道

日本捕鯨協会に聞いてみることに。
会長の山村さんと事務局の山本さんにインタビューさせて頂きました。

なぜ、今IWCを脱退したのでしょうか?

捕鯨に反対する国は、鯨の資源状態に関係なく、1頭たりとも獲るべきではないと考えています。すでにIWCでは鯨の保護のみを目的とした組織に進化しているので、商業捕鯨のモラトリアムの解除に繋がる行為は一切認めないとすると決まったのです。日本はIWCにとどまる限り、捕鯨再開の可能性は無いことが明らかになったのです。日本の調査捕鯨は商業捕鯨再開を目的に実施しています。ゴールの見通しが無くなった調査捕鯨をやめ、自国の経済水域内で商業捕鯨を再開するには、まさに今しかなかったと考えています。

IWCにとどまる限り、商業捕鯨は再開できないとわかったから、今脱退したのですね。

捕鯨の歴史

調べてわかった!

クジラの利用は縄文時代から。日本では食べるために利用していた。
アメリカでは、ろうそく工場の発展などからクジラの油を利用。
イギリスやノルウェーでは、捕獲したクジラの9割を廃棄していた。
クジラの脂皮から油をつくり、街灯油や燃料などに活用していたが、食用として利用することはなかった。
クジラから得ることのできる油は、他の油より品質がよく、石油が発見されるまで、競い合うようにクジラを捕獲していた。

クジラの利用の仕方が、日本と外国ではまったく違っていたんだね。

クジラの減少と増加

現在、世界に生息しているクジラは約90種類。
そのうち、資源の状況が悪化しているのは、シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、カワイルカ類。
その他のほとんどは資源が良好で、特にマッコウクジラは200万頭、南氷洋ミンククジラは76万頭と、増えすぎの傾向にある。

資源状態が悪い鯨種は、なぜ数を減少させたのだろう?

調べてわかった!

理由①人間の捕獲による減少

『日本の水産業』の本によると、「鯨油をとる」という目的で捕鯨を続けてきた欧米諸国は、捕鯨対象としたクジラをつぎつぎといなくなる状態に追い込んできたとある。特に灯火の燃料や機械油に、クジラからとれる油を利用するために、次々に捕獲したためと考えられている。

調べてわかった!

理由②生息環境の悪化

人間の経済活動による生息環境の悪化で減少したクジラもいる。
現在100頭~200頭しかいないコククジラは、エサ場となる海域で石油、天然ガスの開発が行われており、悪影響を与えている可能性が指摘されている。また、シロナガスクジラが増えないのは、ミンククジラの激増が考えられる。シロナガスクジラの繁殖周期は2~3年なのに対して、ミンククジラは1年。オキアミという共通のエサをめぐって競合関係にあり、シロナガスクジラの生息域を脅かしているのだという。

人間の活動によって数を減らしている種もいれば、増えている種もいる。また、シロナガスクジラが増えない理由に、ミンククジラが増えすぎたことが原因とわかり、びっくりした。

反対理由について考える

IWC加盟国でどんな反対意見があるのか?
調べてみることにしました。

現在のIWC加盟国は88カ国。
反捕鯨国と捕鯨を支持する国の数があまり変わらないことに驚いた。強く反対している国は、アメリカ、イギリス、ニュージーランド、オランダなどの豊かな畜産国。なぜそんなに反対するのか調べよう。

それぞれの反対意見に対して、本を調べてぼくが考えたことをまとめてみます。

A クジラは絶滅に瀕している

すべてのクジラが絶滅の危機に瀕しているように聞こえるが、調査からわかっているのは、シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、ヨウスコウカワイルカなどの減少で、その他ほとんどの種で数を増やしている。全てが絶滅危惧種ではない。

B クジラは特別な動物

ぼくたちがたべている牛は、インドのヒンドゥー教では、神聖な生き物とされ、殺したり食べたりしてはいけないとされている。動物に対する価値観は、民族によって様々。同じ動物が、ある民族によっては特別とされ、他の民族には食料とされる現実がある。

C 商業捕鯨は禁止されている

国際捕鯨取締条約の付属文書で規定を読むと、捕獲頭数の設定を検討することが書かれており、商業捕鯨を再開することは法に反していないことがわかる。

D 銛でクジラを殺すことは残酷

爆発銛は1番クジラを苦しませずに捕殺できる方法であると考えられている。日本鯨類研究所によると、鯨の捕殺は即死か致死時間2分以下であり、他の野生動物と比べてもずっと優れている。クジラの致死時間は努力されていると思う。

E 世界の世論は反捕鯨

世界の世論とは「圧倒的に欧米の世論」。IWC加盟国をみても、反捕鯨国は48か国、利用支持国は40か国とあまり変わらない。利用支持国の意見にも耳を傾けてもらえたら。

F 鯨肉を必要としない

30年後にやってくるといわれる食料危機。地球規模で食料が少なくなっており、今のまま人口増加が進めば、そう遠くない将来、地球上の人間の食べる食料をまかないきれなくなる。だからこれからは必要になってくるのではないかと考える。

G 捕鯨は日本の文化ではない

捕鯨が文化であるか否かは、クジラの海洋生物資源としての持続可能な利用とは別の話。地域によって文化の違いがあることは、お互いの理解が必要だと考える。

日本の捕鯨文化

ぼくの住む千葉県はクジラにゆかりがある。
日本の捕鯨の文化をもっと詳しく知るため、捕鯨の歴史を調べてみました。

調べてわかった!

17世紀から現在に至るまでツチクジラを捕獲してきた歴史がある房総。ツチクジラの捕鯨は、1612年に現在の千葉県鋸南町勝山で始められた。現在は、千葉県和田町と和歌山県太地町の捕鯨船が国の許可をもとにツチクジラの捕鯨を行っている。国で決められている年間の捕獲数は54頭。このうち、房総半島の沿岸で26頭が捕獲されている。

和田町は全国で4ケ所しかない沿岸小型捕鯨基地。和田漁港では、生肉の販売を前提にクジラの解体作業が行われています。南房総市のホームページで調べてみると、なんと!解体を見学することができることがわかった!

さっそく解体を見学しに行こう!

クジラの解体作業が始まったのは午前3時。
体長9.3m、重さ12.3tもある大きなクジラを2時間くらいで解体していました。手際がよくてびっくりしました。

写真は全て千葉県南房総市和田町和田漁港内(作者撮影)

解体されたクジラはその場で販売されます。
地元の方が鯨肉を買いに来ていました。今でも、給食のメニューにクジラが出る学校もあるそうです。

クジラが古くから日本の食文化を支えてきた歴史をまとめてみよう。

調べてわかった!

  • 縄文、弥生時代からクジラやイルカを食べてきた日本人。
    ほぼ全国の海岸近くの遺跡から骨が出土している。
  • 奈良時代初期の『古事記』には、神武天皇が鯨肉を食べたという記述がある。『万葉集』には、クジラを捕る人を意味する「いさな獲り」という枕詞を使った歌が十二首ある。
  • 日本では仏教を信じるようになり獣の肉を食べることが少なくなったが、イルカやクジラは魚だと考えられていたため、奈良・平安の貴族の間で、クジラがごちそうとして食べられていた。
  • 江戸時代以降は、捕鯨技術が発達し、多くの人々が食べられるようになった。
  • 明治中期、欧米による日本近海でのクジラの大量捕獲により、日本の古式捕鯨では通用しなくなったため、ノルウェーに学び近代捕鯨を導入。
  • 戦中、戦後の食料難時代、すぐれた栄養価の鯨肉は日本人をおおいに助けた。

食料不足の時代も日本人を助けてくれたクジラ。
その利用は食べるだけにとどまりません。

調べてわかった!

肉や内臓はもちろん、肉の周りに付いている骨やヒレ、油まで利用。
歯や骨は、刀のつばや根付け、かんざし、くし、箸、耳かき、釣り針に。
骨は砕いて骨粉にし、農業用のカルシウム肥料に。ヒゲは楽器などに使われ、和太鼓の内側にはられ、からくり人形や人形浄瑠璃などにも利用。また、肝臓からは肝油、すい臓や脳下垂体からはホルモン剤がつくられるなど、薬としても利用されていた。

食生活だけでなく、日本人のくらしや文化がクジラに支えられてきたことが分かりました。

調べてわかった!

本や絵本で、日本人は供養やお祭りなどさまざまな形でクジラをとむらう心を表現していた。実際に日本各地にお祭りや、鯨を祀った鯨塚が残っている。クジラの骨で作られた橋もある。

まとめ

忘れてはならないのは、文化は多様なものであって、互いに認めあうことが必要だと感じる。

ぼくは、クジラの解体を見学して、今でも捕鯨文化に関わる人々が日本各地にいて、捕鯨が成り立っていることを実感しました。そして、日本人が、クジラを食べるだけでなく、クジラの全てを利用し何も無駄にしないこと、深い感謝の念で人間と同じように供養までしてきたことを知りました。日本人がクジラと共に生きてきたことが伝わってきました。

自然と動物が共存、共生していくために、ぼくたち人間が、海洋生態系のバランスを考え、科学的なデータを基にして数を決めて利用していくこと、それを古来から鯨と共に生きてきた日本から発信していくことができないだろうか?誤った思い込みで反対する人たちに正確な情報を伝え、いっしょに捕鯨の未来を考えていきたいです。