調べようと思ったきっかけ
コロナ禍で自宅で過ごすことが多くなり、母が料理する様子を見たり、そのお手伝いをすることが増え、とても気になることを発見しました。
それは「アク抜き」「アク取り」です。
カレーを作るとき、じゃがいもを下ごしらえで水に浸すことを「アク抜き」、具を煮るときに出る泡を取ることを「アク取り」と言います。
「アク」が出てきたら取らないといけないということはなんとなく知っていましたが、野菜に含まれる「アク」があることは知りませんでした。
「泡のアク」と「野菜のアク」は何が違うの?取らないといけないということは「アク=悪」なの?そもそも「アク」ってナニ?と疑問がたくさん出てきたので「アクの正体 」について調べてみることにしました。

調べてわかった!
アクには、2つの種類があります。
「アク取り」のアクは、肉や魚を煮た時に煮汁の表面に現れる泡のようなものです。取らないと料理の見た目が悪くなったり、料理が「おいしくない」と感じてしまったりします。
「アク抜き」のアクは、野菜を水にひたした時に水にとけている成分です。なすや筍など「アクが出る野菜」と、レタスやニンジンなど「アクが出ない野菜」があり、「アク抜き」の方法も一つだけではなくたくさんあります。



アク抜きの方法は、私が知っている「水にさらす」以外にもたくさんあるので、実験してみます。
〈レンコン〉酢水
レンコンはアクが強く、何もしないで放置しておくと、色が茶色くなってしまいます。酢水につけて、10分放置しておくと、変色が防げます。酢水につけておくものと、何もしないものを2つ用意しておき10分後の色を見ます。
①と②を比べると、①の方の穴の内側が特に茶色いことがわかります。それに比べて②はほぼ色が変わってないです。酢水の効果はバツグンです!

〈筍〉ぬか
筍は、アクの強い春の山菜として有名です。えぐ味の主体はアミノ酸が変化した「ホモゲンチジン酸」といわれています。アク抜きには、米のとぎ汁か、ぬかを使います。私はぬかを使いました。なべに入る大きさに筍を切り、ぬかを入れた水でゆで、ういてきたアクをとります。とったアクを少しだけ食べてみると、とても苦味やしぶ味があって、おいしくなかったです。

アク抜きの方法は、他にもいろいろ!
ほかにも
〈ワラビ〉〈ヨモギ〉〈ルバーブ〉重そう
〈大根〉米のとぎ汁
〈ゴボウ〉酢水
〈なす〉水
〈ぶたしゃぶ〉煮る
〈乾燥だだちゃ豆〉水さらし
きれいな色の桃をたべたい!
皮をむくと茶色くなってしまう桃の色の変色を防ぐ方法はあるか、実験してみた!
【実験の方法】
桃を2切れずつ袋にいれ、それぞれ10分ひたして、取り出して10分置いておく。
- ①水
- ②塩水
- ③砂糖水
- ④レモン水
- ⑤何もしない

塩水にひたすのが変色せず、しぶ味も抜けていてとても甘く、一番効果がある!レモン汁でも効果が出る。
「筍」について調べていたら「ほりたての筍はアク抜きしなくても食べられる」とあったので、検証してみた!


日本大学薬学部 薬草教室に参加!
野菜などの植物のアク=毒だと思っていたので、薬草もアクが関係しているのではないかと思い、興味がわきました。
薬草もアク抜きするの?
毒の成分が含まれているのかな。
調べて分かった!
漢方薬は、薬草をアク抜きせず乾燥させて作るそうです。食用の野草は、身体に入ると良くないえぐみやしぶみ、毒などが入っているのでアク抜きが必要とのこと。
植物に含まれる成分のうち、人に良く作用するものを「薬」、人に悪く作用するものを「毒」といいます。
毒がある⇒有毒植物
薬効がある⇒薬用植物

「アク抜き」はいつからされているのかくわしく知るために、「国立歴史民俗博物館」に行ってみることにしました!

アク抜きはいつからされているの?
調べて分かった!
一万八千年前~一万五千年前にかけて日本やシベリアで発見された世界で最も古い土器には「こげ」がついていて、ドングリなどのアク抜きや、魚油の抽出、貝の処理などの煮炊きに使ったことがわかります。
縄文人のメジャーフードはなに?
縄文時代の栄養源はなに?
調べて分かった!
くり、トチ、魚などが多く食べられていた。
千葉県の古作貝塚で発見された人骨の分析によると、当時の人が必要だったエネルギーの約80%、タンパク質の約30%を、ドングリなどの木の実からとっていました!

縄文時代の遺跡からわかることは?
調べて分かった!
トチの実が豊富な東日本では、アク抜きのための施設が発達しました。各地の縄文遺跡からは、アク抜きのための水さらし場が見つかっています。
私はドングリやトチの実を食べたことがありません!縄文人はトチの実をアク抜きして食べていたことがわかり、もしかしたら現在でもトチやドングリを使った食品があるかもしれない!あるなら食べてみたいと思いました。

山形県出身の母から「とちもち」というおかしを食べたことがあると聞き、早速買って食べてみました!苦みやえぐみは全然なくておいしい和菓子でした。

「とちもち」はどのように加工されているのでしょうか?
鶴岡市食文化推進課の方に問い合わせました。
縄文時代と現在、アク抜きの方法はほぼ同じということが分かりました。
でも、作る過程で気になる材料が一つあります!

「木灰」って、いったいナニ??
調べて分かった!
「木灰(きばい)」は、木を燃やして最後に残る灰のことです。さまざまなミネラルが含まれ、日本のくらしになくてはならないものでした。
木灰を水にとかしたときの上澄みのことを「灰汁(あく)」と言います。
※植物性・動物性のアクは「アク」。上澄み液のアクを「灰汁」と表記しています。
「灰汁」にはどんな使い道があるの??
調べて分かった!
【灰のまま使う】
- 断熱材にする・・・囲炉裏に利用
- 中和する・・・酒が酸っぱくなった時に元の味に戻す
- 食品を長持ちさせる・・・ワカメなどの海産物の長期保存
- 肥料にする・・・植物や作物がよく育つ
- 焼き物を丈夫にする・・・うわ薬に使う
【灰汁を使う】
- 植物のアクを抜く・・・アクの強い山菜などを灰汁で煮てアクを抜く、せんいをやわらかくする
- よごれを落とす・・・アルカリ性の働きで汚れを落とす
- 色を引き出す・・・布や糸を染めるとき、色を調節し、きれいな色を引き出す
伝統的な「藍染め」は、染料に灰汁を使います。ぜひ藍染め体験をしてみたい!と思い、神奈川県の川崎市伝統工芸館に行ってきました。

調べて分かった!
藍染めの原料は、「タデ藍」という1年草の植物です。
タデ藍を発酵・乾燥させて「蒅(すくも)」というものを作り、これに灰汁や日本酒などを入れ、発酵させれば「染液」の完成です。
この作り方が「天然灰汁発酵建」という、灰汁のアルカリ性の性質を利用する、江戸時代からの藍の作り方です。

まとめ・感想

3つのアクを調べました。
- ①野菜のアクは、体に悪いから「アク抜き」します。
- ②肉、魚、煮る、なべのアクは、味や見た目が悪くなるから「アク取り」します。
- ③灰の上澄み液の灰汁(あく)。草木灰などは、アルカリ性の性質を、お菓子や「藍染め」に利用します。







