作品かんたん紹介
2018年(第22回)
調べる学習部門 小学生の部(高学年)
『桃太郎は盗人なのか? −「桃太郎」から考える鬼の正体−』
倉持 よつば
千葉県 / 袖ケ浦市立 奈良輪 小学校 5年生
文部科学大臣賞
桃太郎盗人説の真偽を確かめるべく、全国の桃太郎を読み比べ。すると、桃太郎の話が時代によって異なることを発見。どのように物語が変化していったのか、江戸時代の文献にまでさかのぼり、各時代の桃太郎像をあぶり出します。さらに「鬼」の正体を探るべく、各地を訪ね歩き、自分なりの答えを導き出します。
桃太郎盗人説の真偽を確かめるべく、全国の桃太郎を読み比べ。すると、桃太郎の話が時代によって異なることを発見。どのように物語が変化していったのか、江戸時代の文献にまでさかのぼり、各時代の桃太郎像をあぶり出します。さらに「鬼」の正体を探るべく、各地を訪ね歩き、自分なりの答えを導き出します。
桃太郎は盗人なの?
「空からのぞいた桃太郎」の解説を読むと、おかしいと指摘しているのは、福澤諭吉、芥川龍之介、池澤夏樹、高畑勲の4人。
調べて分かった!
福澤諭吉:桃太郎が鬼が島に行ったのは、鬼の宝を取りに行くためだったということです。けしからぬことではないですか。宝の持ち主は鬼です。鬼の物である宝を意味もなく取りに行くとは、桃太郎は盗人ともいえる悪者です。・・・ただ欲のためにしたことで、ひれつ千万なことです。
(「童蒙おしえ草 ひびのおしえ」より)
芥川龍之介:桃太郎は鬼ヶ島の征伐を思い立った。思い立ったわけは、おじいさんおばあさんのように山だの川だの畑などへ仕事に出るのがいやだったせいである。桃太郎は罪のない鬼に建国以来の恐ろしさを与えた。鬼は、「あなた様にどういう無礼を致したのやら、とんと合点が参りません」と質問した。
(芥川龍之介全集「桃太郎」より)
池澤夏樹:一方的な征伐の話だ。鬼は最初から鬼と規定されているのであって、桃太郎一族に害をなしたわけではない。この話には侵略戦争の思想以外のものは何もない。
(「母なる自然のおっぱい」より)
高畑勲:桃太郎は侵略的な物語。
※本としては見つからなかったので、絵本ナビから調べました。
調べて分かった!
おかしいと指摘する本に、共通していた意見は3つ。
- 桃太郎は急に鬼征伐に行くと言い出す
- 鬼は悪いことをしてない
- 桃太郎は鬼の宝を盗み侵略した
桃太郎が鬼退治に行った理由を調べてみよう!
調べて分かった!
全部で18冊の桃太郎を読み比べました。そのうち2冊が「盗人」、10冊が「盗人ではない」でした。
岐阜県図書館に74冊の桃太郎本!
調べて分かった!
74冊中、
70冊は「悪い鬼を退治するために桃太郎は鬼ヶ島へ行った」。
1冊は「鬼をみたくなり鬼ヶ島へ行った」。
2冊は「急に鬼退治に行くと言い出した」。
1冊は「鬼は何も悪くなかった」と書いてあった。
江戸時代の「桃太郎」
調べて分かった!
一番古い桃太郎は江戸中期の享保年間の「赤本」。そこには、おじいさんとおばあさんが川から流れてきた桃を食べて若返り、おばあさんが妊娠して桃太郎を産んだとあります。
昔と今ではお話の違うところが2つ。
- 桃太郎の生まれ方:「若返り説」と「桃から説」
- 鬼ヶ島へ行った理由:「宝を取るため」と「鬼退治のため」
調べて分かった!
- 江戸時代の桃太郎は、お婆さんが産んだ。
- 明治以降の桃太郎は、桃から生まれた。
- 明治29年出版の巌谷小波の桃太郎より前は、桃太郎が宝欲しさに鬼ヶ島へ行き、鬼は悪さをしていない。
- その後、「悪い鬼を退治する」という理由が付け加えられた。
- 江戸~明治時代のはじめの桃太郎は、鬼から宝を奪い取っている。
- 明治の終わりごろから、鬼が自ら宝を差し出すようになっている。
鬼とは何者?
調べて分かった!
鬼の正体には、4つの説がありました。
- 霊魂説:中国で「鬼」は死者のことを指し、「魂」を意味する。恨みをのんで死んだ霊魂や生霊を鬼とした。
- 海ぞく説:岡山県吉備地方の鬼退治伝説。鬼たちが海上を行き交う船をおそっていたことから、鬼の正体は海ぞくではないかという説が出てきた。
- 人間説:鬼が人間であるという説。「酒呑童子」では人間が鬼となる。
- 神説:鬼の姿をしているけれど、その土地の神様としてまつられている。
まとめ
おもったこと
最後に、優しい鬼についてもふれたいと思います。昭和8年、日本で初めて優しい鬼が出てくる童話を浜田広介が書きました。小学校の授業でも学習する「泣いた赤鬼」です。登場するのは、優しい鬼たちばかりです。浜田広介が書いた「ももたろうの足のあと」にも悪い鬼は出てきません。今は「優しい鬼もいるんじゃないか」と考える人も多くなったのではないでしょうか?時代の流れとともに鬼の正体も変わってきたのだと思います。今回の調べ学習で、桃太郎の話から、鬼の正体を調べるうちに、「鬼とは何者なのか?」という自分なりの答えがみつかりました。それは、「鬼は1人1人の心の中にいて、その鬼が1人1人の心を成長させてくれる存在である」ということ。鬼が自分の心に出てくることは、悪いことではなく、自分の心を成長させてくれる“あかし”なんだと思うようになりました。自分の心の中に鬼が出ることで、やる気を出したり、がんばろうとしたりする感情がたくさんあふれ出てくるのではないかと思います。
おもったこと
去年のコンクール入賞で頂いた副賞に、「空からのぞいた桃太郎」という本がありました。その本には、『鬼だから殺してもいい?』『あなたはどう思いますか?』という帯がついていて、私が知っている桃太郎のお話とは違っていました。さらに解説には、福澤諭吉は「桃太郎は盗人だ」と非難したと書いてあります。「桃太郎が盗人?」これはいったいどういうことなの?それと同時に、「鬼はみんな悪者だと思っていたけれど、鬼ってみんな悪いのかな?」という疑問も出てきました。まずは、桃太郎がどうして盗人だと言われているのかについて調べてみようと思います!