作品かんたん紹介

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おもったこと

家庭菜園で育てていたブルーベリーの木に、むしゃむしゃと葉を食べる無数の毛虫を発見。ここから、僕たちとマイマイガの戦いが始まった。『彼を知り、己を知れば、百戦あやうからず。』僕はマイマイガについて調べることにした。

我が家VSマイマイガ・幼虫編
(オリジナル作品 4~5ページ)

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5月初め、家庭菜園のブルーベリーの木に、マイマイガの幼虫がうじゃうじゃ!
家族総出でとにかく取りまくる。連日150匹は簡単にとれるほどの大発生。
薬品は使いたくないので、棒でつついて、バケツに落として回収。
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色がとても派手で見つけやすい。なぜわざわざ見つけやすい派手な色をしているのかな?
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マイマイガに毒はあるのかな?
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モッコウバラ、ジューンベリー、バラの木、モモの木にとくに多い。ブドウやキウイには、ほとんどついていない。

我が家VS マイマイガ・成虫編
(オリジナル作品 6~9ページ)

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7月上旬、マイマイガの成虫が産卵をしはじめた。
父のズボンからパラパラと出てきた小さな粒はマイマイガの卵だった!ガの卵塊をくじょするため、道具づくりをはじめた。
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釣りざおの先に、半分に切ったペットボトルをしばりつけ、卵塊をこそげとる。卵塊は高いのき下に多いため、渓流釣り用の7mざおを使った。
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地面に落とした卵は、翌年孵化する?
死んでしまうのではないかな?
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夜、父とマイマイガの様子を見て歩いて気付いたことがある。

・電球色の電灯の周りはガが少ない。
・昼白色の電灯の周りに多い。

家の玄関の電灯は、昼白色だったため、電球色のLED電球に交換。すると、産卵に来るマイマイガが激減!

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マイマイガはなぜ電灯に寄ってくるのだろう?
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産卵場所に好みはあるのかな?
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大発生したマイマイガをくじょしていく中で、多くの疑問が浮かんだ。
その一つ一つを調べて、解決していこう。

生態を知る
(オリジナル作品 10~22ページ)

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Q.なぜ、マイマイガという名前なのか?

ぼくの予想

ヒラヒラと飛ぶからなのでは?

調べて分かった!

A.舞舞蛾

雄が日中よく飛翔するので、マイマイガと呼ばれている。
メスは、ほとんど飛ばずに、樹幹で静止していることが多い。
大型で太い腹中に卵を内蔵しているメスは、幼虫の食樹付近に静止し、交尾のため飛来するオスを待っている。

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英名もジプシーモスというのが面白い!
ジプシー=おどりが上手というイメージがあるよね!
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葉にとまっていた大量のマイマイガの一匹をたたいて落とした時、他のは、じっとして動かなかった。ほとんどがメスだったということだ!
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Q.マイマイガには毒があるのか?

ぼくの予想

あると思う。さわるとすごい痛みなのでは?

調べて分かった!

A.1齢幼虫にのみ毒がある。
卵から生まれたばかりの幼虫が1齢幼虫。

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なぜ1齢幼虫にしか毒がないのだろう?

調べて分かった!

一番弱い1齢幼虫の時は鳥などの捕食者に対する防御手段として毒を持つが、2齢以降は、毒を持つために使う栄養分を成長に使っていると考えられる。
防御手段が手薄でも、どんどん成長して、幼虫時代をできるだけ早く乗り切るというのもまた一つの生き方である。

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なるほど。
だからマイマイガはめきめき大きくなるんだな!
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Q.マイマイガの幼虫のもようはなぜ派手なのか?

色がとても派手で見つけやすかったけど、なぜわざわざ見つけやすい色をしているのかな?

ぼくの予想

目立つと、それはそれでよいことがあるのでは?

調べて分かった!

A.捕食者(鳥)に対する警告色だから。

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調べて分かった!

「警告色・目立つ擬態」は、鳥がいやなもの(例えば、かたい、つかまえにくい、にがい、いたい、吐き気がする、怖い、毒がある)を連想したり、誤解したりすることで成立する。一方、「保護色・隠れる擬態」は、背景の色に似ていたり、虫らしくないものに似ていたりするため、食べ残されていく。

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警告色と保護色ではどちらが有利なのだろう?

調べて分かった!

警告色と保護色の生存率は、季節によって変化する。

警告色は、この色に毒があると知っている成鳥だけが活動する前期と、若鳥が成長をつんだ後期に、効果を発揮する。一方、鳥の巣立ちの時期(警告色の意味を知らない若鳥が多いシーズン中期)には、保護色の生存率が上昇する。

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春に孵化するマイマイガの幼虫は、1齢のときは黒色(保護色)。
毒をもち、成鳥に対する防御策を持っている。成長していくと、色が派手(警告色)になり、「毒がある」という偽のアピールをする。
そして、次第に色が地味になり保護色となる(毛が長くなる)。

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マイマイガは、季節と共に、色を変えながら、鳥対策をしているのか・・・
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Q.マイマイガの成虫には口が無いってホント?

調べて分かった!

A.成虫になると、口が退化して何も食べない蛾がいる。

幼虫時代に、体内に蓄えた栄養分だけで短い成虫期間を終える。
マイマイガも、その一つ。

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マイマイガの成虫の寿命は8日間。
羽のある昆虫たちは、成虫になると脱皮をしなくなる。
古い外骨格のままで基本的に細胞分裂は無い。
傷つけば、傷がなおることはない。細胞の死亡=成虫の死亡となる。

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つまり、

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大発生に向き合う
(オリジナル作品 23~27ページ)

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Q.なぜ、大発生するのか?

調べて分かった!

A.
①異常気象:高温少雨のような異常気象がつづくと、昆虫が大増殖し、天敵群の抑止力を突破する。
②環境の単純化:森の構造が単純化する程、天敵群の抑止力がよわくなり、蛾の生存率が高まる。

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地球温暖化や植林地は、大発生の原因になりうるということだな!
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Q.なぜマイマイガの大発生が終息するのか?

調べて分かった!

A.天敵による捕食・寄生。ウイルス等による病死など。

(アオクチブトカメムシによる捕食、寄生蜂による寄生、マイマイガ核多角病ウイルスなどによる病死)

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Q.なぜマイマイガが大発生すると、その時に限ってウイルス病が流行し、一気に終息するの?

調べて分かった!

A.過密に存在するマイマイガの幼虫が、一気にウイルスを広げてしまうから。

コンピューターで計算すると、幼虫のいる木が6割以上になった時、ウイルス病が突然大流行する。そしてマイマイガ大発生が突然終息する。

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マイマイガと電灯
(オリジナル作品 28~31ページ)

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父と夜、見回った時、ガが集まっている電灯と、そうでないものがあった。
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Q.マイマイガが集まりにくい電灯は?

調べて分かった!

A.最も集まりにくいのはLED。

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Q.蛾は、電球の光の何を見ているのか?

調べて分かった!

A.紫外線

人間の目は約550nm付近の光(黄緑色)を最もよく感じる。
一方、虫は、約360nm前後の光(紫外線)を最もよく感じる。

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建物の壁等に、マイマイガが産卵するのをさけるには、マイマイガが集まらないように、

1.電灯を消す。
2.電灯を使うなら、蛾が認識する紫外線を出さないLED電球を使う。

マイマイガの卵
(オリジナル作品 32~35ページ)

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Q.地面に落ちたマイマイガの卵は、翌年孵化するのか?

調べて分かった!

A.孵化するものもあれば、死ぬものもある。

卵が死ぬのは、表土中の、微小な捕食性(肉食性)の動物や病原性菌類などの天敵によると考えられる。場所により死亡状況は大きく異なるので、卵は取り除いた方が、確実。

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卵塊を取る時、卵塊をおおう尾毛や鱗粉は外れてしまうが、このような保護が無ければ、卵は冬を越せず、凍死するのでは?

調べて分かった!

マイマイガの卵の凍結温度は、-28度。

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ぼくの住んでいる茅野市では、ここまで冷えない。
凍らない→翌年孵化してしまう!?
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ぼくは『イモムシの教科書』の著者、安田守さんにメールで聞いてみることにした。
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ぼくのメール

こんにちは。今年の夏休みの宿題で、マイマイガのことについて調べています。今年は、茅野市でもマイマイガが大発生したので、毛虫の駆除、卵塊の駆除に家族総出で毎日頑張ってきました。とても気になるのが、駆除した卵が地面に落ちている場合、その卵は翌年孵化するのでしょうか。なるべく回収するようにしていますが、高い位置の卵塊はこそげると、飛び散ってしまいます。マイマイガの卵は-28度まで凍らないと書いてあります。茅野市は寒くても-20度以下にはなりません。

安田さんのメール

こんばんは。メールありがとうございます。
キアシドクガという種類の卵の耐寒性についての論文の中で、少しだけマイマイガについても書かれていました。キアシドクガの凍結点は、-26.3~-29.1度ですが、そこまで下がらなくても、-10度に55日間さらされるとふ化率が10.9%、また120日間なら0%になり、これは同じようなことがマイマイガでも報告されている、とあります。なので、凍結温度が-28度のマイマイガも、それより暖かい条件でも長期間つづくとふ化率が下がるということはありそうです。しかし、茅野の冬で-10度が何十日も続くことはないと思うので、残念ですが卵はそれほど死亡しない可能性が高いように思います。
やはり卵の段階でていねいに取りのぞくことが一番の方法かもしれません。

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教えてもらった論文を母に教えてもらいながら読んだ。
一度でも自発凍結点以下の気温になれば、卵塊ごと、凍結死亡するが、茅野市でー28度になったことは今までにない。
やはりマイマイガの卵は、凍結しないようだ・・・。

マイマイガの産卵場所(オリジナル作品 38~49ページ)

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マイマイガは産卵場所に好みがあるのか?

調べて分かった!

①森林では卵塊は、木の幹の下の方、地上2~3m以下に多く産みつけられる。幹や穴や亀裂があると、その中を好んで産卵する。
②シラカンバなど、樹皮の白い木を好む。
③照明や支柱の近くの壁などにも産卵する。
④雪の多い地域では、雪に埋まる高さに(→鳥等の天敵回避)、雪の少ない地域では枝近くの高いところに産卵する。
⑤トドマツの樹幹に麻布、不織布などの布を巻き付けて比較したところ、無処理の木よりも、バンド部分に集中的に産卵されていた。
⑥常緑広葉樹林では、葉の裏側、薄暗い場所を産卵場所に選ぶ。

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看板の文字の上に産卵していることについて安田さんに写真を送ったところ「エッジ効果」について教えてくれた。

安田さんのメール

看板への産卵写真、とても面白いです。以前学会で講演を聞かせてもらった石川県立大学の弘中満太郎さんが、昆虫がどのように光によってくるかを研究されていて、その中でエッジ効果を紹介されていました。

いくつかの昆虫は光そのものと言うよりも、明るいところと暗いところの境目を目指して飛んでくるのだそうです。これがそのまま当てはまるかどうかわかりませんが、看板の文字のふちにそってとまっている写真を見て、その研究を思い出しました。

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安田さんのアドバイスもあり、自分の家の卵塊付着部位数を数えてみた。

調べて分かった!

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今回のカウントでは、木材質に卵塊が多かった。
木の部分の方が物陰が多く、「相対照度の低い場所=物陰」に産卵し、「鳥等の天敵回避」しているのではないか?
白い壁の卵塊数は木材質に比べかなり少なかったが、漆喰と木という全然違う材質同士なので、色に関しては、何もいえない。
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材質が同じ場合、白い壁の方が卵塊数が多いように思う。
「白」はマイマイガにとってどんな意味があるのだろう?
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ぼくの予想

幼虫の餌として好まれる白樺の樹皮の色に似ている?
産卵に何日もかかるマイマイガにとって、白い壁は白色のメスにとって保護色になる?
しかし、卵塊は時間がたつと茶色になるので、鳥などの捕食者からは目立つはず。

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産卵についての好みは、安田さんにアドバイスやいろいろな文献を教えてもらいながら考えたが、難しくて答えに到達できていない。材質や触感、何か共通点がありそうだけど、マイマイガが「色が見えるのか?」ということもまだ分かっていない。
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また新たな疑問が・・・!
安田さんに聞いてみようかな~

共生をめざす(オリジナル作品 50ページ)

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おもったこと

マイマイガについて調べるうちになんだか愛情がわいてきた。成虫の間食べも飲みもせず、卵を残して死ぬのみ。なんだか悲しくなり、来年も駆除するのは嫌だと家族皆が思った。大発生さえしなければ叩かなくてもいい。卵をしっかり駆除することがマイマイガとの共存につながっていくのだ。

今回一番感激したのは、安田さんに教えてもらえたこと。本や資料から知ったことを自分の考えに都合よくこじつけようとすると、“実際はこんなだよ”と質問に答えていただいた。ありがとうございました!

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