作品かんたん紹介
2021年(第25回)
調べる学習部門 中学生の部
『中学生のわたしが考えるSDGs~家庭菜園はSDGsに有効なのか~』
久郷 悠人
東京都 / 渋谷教育学園渋谷 中学校 2年生
優秀賞・日本児童教育振興財団賞
緑の少ない豊島区がSDGsモデルに選ばれたことを不思議に思った作者。自宅の家庭菜園がSDGsに貢献できるのではないかと、コンポストを研究・導入し、循環型の家庭菜園へと進化させる過程を記録しました。豊島区の循環型の公園管理が、SDGsとして評価されたことに納得し、人と緑とが共存できる「小さな里山」作りの輪を広げることが持続可能な街を創るものとまとめました。
緑の少ない豊島区がSDGsモデルに選ばれたことを不思議に思った作者。自宅の家庭菜園がSDGsに貢献できるのではないかと、コンポストを研究・導入し、循環型の家庭菜園へと進化させる過程を記録しました。豊島区の循環型の公園管理が、SDGsとして評価されたことに納得し、人と緑とが共存できる「小さな里山」作りの輪を広げることが持続可能な街を創るものとまとめました。
では、今は?
東京の都市部における田畑の実態を調べてみた。
『第71回東京都統計年鑑(平成31年・令和元年)』で調べた。
・豊島区の農用地は、0.1ha(ヘクタール)
比較のために調べると、練馬区は214.4ha
・豊島区の農家人口は、ゼロ。
練馬区は、1201人
このような実態に関わらず、豊島区がSDGsの認定を受けた理由はどこにあるのか。この疑問を頭の片隅におきながら、「SDGsの理解」へと話を進めよう。
17のゴールにはどんなものがあるのだろう。
SDGsの目標の中に、次の2つを見つけた。
⑪住み続けられるまちづくりを
生産の立場を体感するために家庭菜園に取り組む
⑫つくる責任つかう責任
「3R」、すなわちリデュース・リユース・リサイクルの取り組みを習慣化する
自分が子供のころから続けている家庭菜園・「悠人ベジガーデン」がSDGsに対して有効なのか、役に立てるのか、調べてみよう。
① 植物の成長を間近で見ることができる
種まきから結実まで、普段、口にする食物がどのように育つのかが見られ、新しい発見がある。
② 植物の普段、目にすることのできない部分をみることができる
左の写真は、掘り出している最中のジャガイモの様子。よく観察すると茎の先端が芋の部分につながっていて、食す部分は根ではなく茎の一部だと分かる。家庭菜園の体験は、このように知識を深めてくれる。
③ 消費者でありながら生産者を体験できる
普段は、食べ物は生産者から消費者へ渡るという一方向の流れだが、家庭菜園は生産者の立場を垣間見させてくれて、生産することの大変さや食べ物一口一口の重みを気付かせてくれる。
家庭菜園はどのようにSDGsに結びつくのだろうか?
それは、収穫できる野菜や果実の量を予測して栽培することで、家庭で消費する範囲の量を生産することができるからだ。輸送にかかる負担、野菜の包装など、地球への負荷を軽減することができるからだと考える。
(参考)下は、令和3年度の「悠人ベジガーデン」の収穫一覧。
家庭菜園の取り組みが、「地産地消」の良さを持っていて、SDGs⑫「つくる責任とつかう責任」にもかなうことは確かだと分かった。
でも、取り組みはこのままでいいのだろうか。これまでより、もっと深め、さらに進化させることはできないだろうか。
「循環型農業」として、熊本県小国町の取り組みを知った。「町内の家庭や学校給食センター、事業所などから出た食品残さ(残り物)と牛ふんでたい肥を作って販売し、野菜を育てて町内の販売所で売って」いるとあった。
また、堆肥づくりを農業に取り入れることで、生ごみを肥料にして生命の循環が生まれると書いてある資料があり、目を奪われた!
上のイラストのように、<現状>の一方通行のベクトルから、「野菜を作る→食べる→出た生ごみを堆肥にする→堆肥で野菜を育てる」という三角形のサイクルに変えることが、わたしのベジガーデンが<理想>とする形だと気付いたのである。
調べてみることにした。
家族4人の1週間の生ごみの総重量は、1591グラムとなった。1か月で約6キログラム、1年では約72キログラム。これだけの量をゴミとして燃やしていたことに驚きを隠せない。
わたしは調理する母に次の4点を提案した。
①野菜の皮はなるべく薄く剝くようにする
②皮ごと使える野菜はよく洗い、皮のまま調理する
③残飯がゼロになるよう、作る分量に気を付ける
④食事は残さない
その結果、次の1週間の生ごみの量はこう減った!
総重量は1293グラム。300グラムを減量できた。1年間では約16キログラム削減できる!
今後、さらなる生ごみ減量に向けて堆肥づくりにぜひ取り組みたいと思った。
これまでは、買ってきた肥料入りの培養土を使って野菜を栽培し、収穫後は肥料を追加して次の野菜作りに利用してきたが、今後は生ごみから作る堆肥によって土壌そのものを作っていく。
いったい堆肥はどうやって作るのだろうか?
用意するのは、上の3点。そして大切なのが、生ごみである。ただし、堆肥作りに使える生ごみは限られる。
堆肥作りに取り組んで3か月。課題もいくつか見えてきた。
・今のコンポスト(18リットル)では、わが家の生ごみ2週間分位しか堆肥化できないという、処理量の問題。
・切り返し作業の際の臭いなど、衛生管理の問題。
しかし、ゴミを焼却するエネルギーや二酸化炭素の削減に役立ち、さらに植物を育てる土壌を作って生命の循環を生み出すことから、SDGsに貢献する生産と消費の調和の在り方なのだと確信している。
これまで家庭菜園をSDGsの視点から見てきた。
ここからは視野をやや広げて、豊島区や地域単位の取り組みを調べようと思う。
その理由を調べてみよう!
豊島区には、SDGsの視点から注目したい3つの公園がある。
①豊島区庁舎の10階テラスの屋上庭園「豊島の森」
②「南池袋公園」
③「としまみどりの防災公園」通称「イケサンパーク」
それぞれ「池袋の里山」と呼べるような公園を目指していると感じる。
コンセプトは「豊島区の植生や生態など自然の仕組みを学びながら憩える場」。
関東平野に自生する木々を植栽し、荒川水系を再現した水槽には、絶滅危惧種のカントウタナゴなどの淡水魚を泳がせている。再現した小川には、雨水を流している。
平成28(2016)年にリニューアル。
この地域にもともとあった植物を再生することでかつての自然環境を取り戻す活動が行われている。
令和2(2020)年にできた新しい施設。様々な防災設備を持ち、次の3つを柱に新しい公園を目指している。(写真:上)
①公園を起点に循環を生む。
②多様性を楽しめるコミュニティを作る。
③小商いや新しいチャレンジを応援する。
この柱に沿って先駆的な取り組みがある。
・毎週末、農家が直接出店するマーケット
・日本各地の食材を使う手作り料理カフェ
・公園内の小型店の出店や運営の応援
・育てた野菜やハーブ、花をシェアする場=コミュニティーガーデン(写真:下)
こういったことが豊島区が「SDGs未来都市」に選定された背景にあったのかもしれないと考えた。そして、これらの取り組みをもっと区民に知らせるべきだと思った。
母校の小学校に、当時の担任の先生を訪ねた。
学校では「教える」行為すべてがSDGsであるとのことだった。
小学校でも「地産地消」の一環として、ナス、ピーマン、キュウリ、ミニトマトを自分たちで栽培している。新潟県から稲穂を送ってもらい脱穀や精米を体験するとともに、リモート授業では米農家の話を聞いたとのこと。生産者と消費者の連携は教育の場でも役立つとのことだ。
小学校では、授業を通して生産者と消費者の相互理解のための試みが進められていた。
公園では、地産地消への第一歩となる「コミュニティガーデン」が活躍していた。
一軒一軒の家庭でも持続可能な家庭菜園を作れる可能性は高いと考えている。
こうして「小さな里山」を広げていけば豊島区全体に食の循環が生まれ、「里山in豊島区」として消費だけの都市から生産と消費を両立できる都市へと持続可能な成長をとげられるのではないかとわたしは考える。
最後に、進化の途中である「循環型悠人ベジガーデン」の現状をまとめておく。
まとめ
おもったこと
豊島区が「SDGs未来都市」の認定を受けたことをきっかけにSDGsについて考え、自分で取り組めるSDGsはないのか考えをめぐらせた。
「小さな里山を各家庭、学校、自治体が築きつつ、地方との連携によって『地産地消』を目指すこと、それが持続可能な豊島区のSDGsであると考え、また中学生の今の私が見つけ出したSDGsであるとまとめたい。」
おもったこと
わたしの住む豊島区が、令和2年「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定された。
SDGsは「持続可能な開発目標」であるから、生産と消費、そして開発を調和させた都市が選定されると考えていたので、田畑の少ない豊島区が選ばれたことに疑問をいだいた。
わたしは、SDGsについて考えるとともに、自分の身近なところから実践できるSDGsに取り組んでみようと考えた。